音楽が奏でられる
場所についての学び。
「なければ、つくればいい」
主義の人たち。

場所:WORLD BOOK CAFE

2020年2月29日に控えた10回目のOTO TO TABIへ向けて、私たちは様々な“気になる人たち”から〈学び〉を得るべく、お話をうかがっていくことにしました。
第1回目のお相手は、FMノースウェーブでディレクターをされている津田鉄平さんと、札幌でブックカフェの〈WORLD BOOK CAFE〉を経営されている横井孝二さんです。
今回、津田さんと横井さんにお声がけさせていただいた理由…それは、お二人がブックカフェを舞台に〈Juxtapozed with U(ジャクスタポーズド ウィズユー)〉というあたらしい音楽ライブイベントを立ち上げたと耳にしたからです。
〈Juxtapozed with U〉は、先日6/28にshowmoreを迎えて開催した『vol.0』を超満員で成功させ、すでに次回(9/20)vol.1はシンガーソングライターの大比良瑞希さんが来ると告知されています。
聞き役としてOTO TO TABIからは運営の川畑が出席。
音楽とカフェ、音楽と街についての話。とても深くて充実した〈学び〉の時間でした。

音楽だけじゃなくてアーティストの
周りの空気感というか、
そういうのも大事かなって
いうのはありますね

左:FMノースウェーブ ディレクター津田鉄平 
右:WORLD BOOK CAFE 横井孝二

「それぞれの接点を振り返って」

―まずOTO TO TABIと津田さんとの接点からなんですけども、以前からノースウェーブを通じてOTO TO TABIをPRする際にお世話になっていたんですよね?

OTO TO TABI 川畑(以下 川畑):そうです。番組に出させてもらったりとか、あとは後援に付いてもらったり。

―津田さんはOTO TO TABIを知ったときの印象など憶えていらっしゃいますか?

FMノースウェーブ ディレクター 津田鉄平(以下 津田):もう最高でしたよ。結局、他の地域と比べてアーティストのブッキングにお金がかかっちゃう土壌なので、だからどうしても商業的にならざるを得ない部分もあるんですけど、でもそれをコイツら考えてないぞっていう(笑)

川畑:はい(笑)

津田:主催者側の方が、売り上げや集客は一旦置いておいて、本当に自分たちが『見て欲しい』『聴いて欲しい』と思っているアーティストさんたちを呼んで、出てもらっている。で、それを何回も続けている。僕の中では日本で1番音楽愛のあるフェスだと思っています。

川畑:なんと気持ちの良いお言葉…ありがたいです!

―そのお付き合いさせていただく中で、2019年はラジオ番組〈FEEL ON THE STREET〉で5週に渡るコーナーを作ってもらって、かなり密に関わったと思うんですけども、その時によく話に出たのは「番組が扱っている音楽シーンと、OTO TO TABIが扱う音楽シーンと、共通部分多いよね」ということでした。

津田:『今面白いのは何だろう』って考えたらそこにたどり着く感じですよね? もちろんテレビとかYouTubeでよく見かけるアーティストさん達も最高なんですけど、『その他にも素敵なアーティストさんはもっとたくさんいる』『もっとたくさんの音楽に出会って欲しい』っていうところでOTO TO TABIさんとは何か共通点があるのかなと。

川畑:そうですね、普通に観たいアーティストを呼んでいる、というのが大きなところを占めていて、スタッフで投票をして呼ぶアーティストを決める流れになっているんですけど、そうなると、すでにたくさん北海道に来ているアーティストよりも、まだあまり来ていない話題のアーティストに集まったりします。

津田:マスメディアに依存していないっていうか、世間でこれはすごいぞって盛り上がっているものばかりに依存しないで、自分たちで呼び込んでるっていう印象があって。僕らの番組もそういう形でやっていたので。そういう、本質的にいいなって思うものをOTO TO TABIさんも僕たちがやっていた番組〈FEEL ON THE STREET〉も伝えているんじゃないかな、っていうのは思います。

―次に、OTO TO TABIと〈WORLD BOOK CAFE〉さんとの接点で行くと、『ハモニカ文庫(※2019年の本を展示する企画)』でお世話になったということがありました。

川畑:ちゃんと組んだのは今回が初めてですよね。それまでフライヤーは置かせていただいてましたけど。

WORLD BOOK CAFE 横井孝二(以下 横井):そうですね、フライヤーをいただいたりしていました。OTO TO TABIっていうネーミングからして素晴らしいじゃないですか。うちも『旅と世界』をテーマにしているので、これは共通しているなあ、というのはあります。

―お店のテーマについて、もう少し深くお聞かせ願えますか。

横井:『世界と旅』ですね。この『世界』っていうのは『今までと違った世界』っていう意味もありまして、普段仕事や勉強をしている学校とか会社とかじゃない、違う空間。そういう意味も込めての『世界』なんです。

―それはすごく分かります。ここに来る人って、そういう世界を求めているだろうな、っていう感じはします。

横井:僕自身、コーヒー飲んでデザート食べて友達と喋るっていう、それだけの場所ではなくて、感性を刺激されたりだとか新たな気持ちをもらえたりだとか、違う空気を味わえる空間を作りたいなと思ってますね。

津田:90年代っぽいんですよね、〈WORLD BOOK CAFE〉さんって。あの時って、ネットとかが今みたいにあったわけではない時代なので、自分の足で文化的な刺激を探しに行っていた。そこで、カフェやクラブへ行っていたわけですが、カフェもクラブもおしゃれな場所っていうだけじゃなくて、まだ見ぬ「最先端」や「カルチャー」を見つけに行く場所、みたいな感じでした。それが、2019年の今も、このお店にはあるなぁと感じてます。

横井:カルチャーを感じる場所、ですよね。本来カフェってそういうものだったんじゃないかなと思っていて、まさにフランスとかも『フランス革命はカフェから始まった』みたいに言われたりしていることもあります。単なるカフェじゃなく、何かが始まる場所、新たな何かを生み出す場所、みたいなものになったらいいなとは思っています。

「〈WORLD BOOK CAFE〉で
音楽イベントが始まったきっかけは」

―そもそも、お2人ってどういう風に知り合われて、どういう風にイベントをやろうってことになったんですか?

横井:急接近でしたよね(笑)

津田:(笑) 2年前くらいからですかね、普通に来てたんですよ、お客さんとしてこっそり。いつも思ってたのは、『本や映画で溢れているこの空間でライブをやったらすごくいいよな』って。でも、いくら日々通っていてもライブをやっている気配がまったく無くて。

横井:そうなんですよね、ライブをやるとなると、どうしても他のお客さんに迷惑がかかるんじゃないかとか…。

津田:で、僕が新しいライブイベントをやろうと思って。それも音楽の聴き方としてライブハウスじゃなくてもっと音楽の中に…何て言うのか、もっと原初的な体験と言うか…焚き火を囲んで、隣でギターを持った人がポロロンって弾いてくれる、ああいう構えずに音楽を聴けるような。
しかも、常々この業界に居ながらフラストレーションに思っている、なかなかアーティストを札幌へ呼びづらい、集客が確実に見込めるようにならないと来札してくれないっていうのがあって、『じゃあ自分でやろう』って。

横井:そこがすごいですね。自分で呼ぼうって。

津田:やっぱり呼びたい理由っていうのは、みんなに聴いてほしい、っていうことです。まだ見ぬ素晴らしいアーティストの方はたくさんいらっしゃるのに、北海道で知られてないのはもったいない。でもその知られてないのも無理はなくて、つまり簡単に北海道に来られない、っていうね。

川畑:全国ツアーでも札幌はなかなか来ませんからね。

津田:インディーズのアーティストの方々は、自分たちの持っているカルチャーに素直な音楽表現をしている方が多い。でも、そういうアーティストの方々はメジャーではないので、プロモーション費用がなかったりとか、遠征費用がなかったりで、なかなか気軽に北海道にはこれなくて。
そこで、そういうアーティストを自分で責任を持ってお呼びさせていただいて、〈WORLD BOOK CAFE〉さんみたいな、カルチャーに囲まれている空間でライブをやってもらえると、音楽を聴く空間としてライブハウスとは違った良い音楽体験ができるんじゃないかなあと。この前showmoreにライブしてもらった時もそうですよね?

横井:津田さんから、最初にライブやりたいって話しを頂いて、『どういうアーティストを呼びたいんですか?』っていう話になって、『考えている人はいるんですか?』って聞いたらshowmoreとか大比良瑞希さんとか、僕の好きなジャンルにドンピシャだったんですよ。たぶん同じ世代っていうのがあるのかもしれないんですけど、すごい趣味が一緒と言うか、考えてることが一緒。

津田:最初僕、いきなりお店に電話して(笑) 『あの…オーナーさんいらっしゃいますか?』みたいな。

横井:すごいびっくりしましたね。なんなんだ? と思って、『騙そうとしてるんじゃないか』みたいな。

津田:僕のことNORTH FACEさんだと思ったんですよね?

―アウトドアブランドの?

横井:そうそう(笑) なんか、ブランドのキャンペーンでうちとコラボしたいみたいなこと言ってきたのかなと思ったら、ノースウェーブさんだった。ノースウェーブで番組作りはしてるけど、それとは別に個人でやりたいっていうお話だったんですよね。

「vol.0はshowmore、
vol.1は大比良瑞希さん」

津田:お話しした時に、第1回は大比良瑞希さんを呼びたいですって話を僕はしてて、横井さんは大比良瑞希さんのことはご存知なかったんですけど、聴いていただいたら『すごい良い』って言ってくれて。で、最近どんな音楽聴いてるんですか? って聞いたら、『最近showmoreって好きなんですけど』って返ってきて。showmoreの井上くんは、大比良瑞希のバックバンドやってますよ! って(笑) 出身が北海道ですよ、みたいな話もして。

横井:で、よく2人で話してるのは、『誰かが作ってくれないんだったら自分たちでやるしかないな』っていうの話しましたよね。やるしかないな、っていう。

津田:で、面白かったのが、大比良さん呼びましょうっていう話になって、そしたら本当にたまたまshowmoreの井上くんから僕に電話がきて、『こんど友達が結婚式やるので札幌に行くんですけど、何かできませんか』って言ってきて、『あれっ、これは!』と思って、速攻〈WORLD BOOK CAFE〉さんに電話して、『showmoreのライブやりますか?』『じゃあぜひ』ってなって。開催日の2週間前とかですよね。 そしたらチケットがすぐにソールドしちゃって。

横井:正味1日くらいで全部売れたって感じですね。やっぱり好きな人はアンテナ張ってるんだなって思いましたね。

―僕もライブ当日は観させてもらったんですが、まず新しいイベントが始まるんだってすごい期待感がありました。会場に向かう間もshowmoreの音楽を聴きながら街を歩いてきて。そしてライブが始まったら街の夜の感じそのままというか、ライブハウスよりも夜を感じられるような体験でした。

津田:夜にやりたかったんですよ、やっぱりね。あえて、都会の夜にやりたいっていうのがすごいあって。いわゆるみんながシティポップって呼んでる音楽って、歌詞もサウンドも、街での暮らしや日常生活にすごい寄り添っていたり、溶け込んだりしている音楽。

―それこそ、歌詞も夜が舞台だったりしますもんね。

津田:うん、ラブソングとかもあるんですけど、それよりも日々の生活の中で…みたいな曲がすごく多いので、その生活の延長線上にある場所がここだし、ライブハウスに潜ったりするんじゃなくて、より日常に近い場所…街中でやることで。

横井:ゆったりした感覚って言うか。なんかこう、チル(chill)いって言う。

津田:〈WORLD BOOK CAFE〉を出たらテレビ塔があって、その景色を見ながら、ライブの余韻を胸に、今日もまた夜が過ぎていく…みたいな。

横井:仕事が終わった金曜日の帰りにね。

「〈WORLD BOOK CAFE〉が
素敵な理由」

川畑:カフェでライブをやっているような場所はあるにはあるんですけど、ちゃんとこういう良い場所で良いクオリティのアーティストが来るのは、少ない気がします。

津田:〈WORLD BOOK CAFE〉さんはお店のパッケージングがすごくいいんです。お店のコンセプトにしっかり一本筋が通っていて、そこにカルチャーの香りがちゃんとある。見せかけだけでカルチャーの香りが無いと嘘っぽく感じてしまうのですが、〈WORLD BOOK CAFE〉さんはオーナーの横井さんが伝えたいカルチャーがしっかりと根底にあって素敵だと感じています。

―お店のことで言えば、〈WORLD BOOK CAFE〉さんみたいに、来るたびに変化があるカフェってなかなか無いですよね。

横井:やっぱりお客さんに来てもらって、普通にコーヒーの味とかも勿論なんですけど、目で見て楽しんでもらったりとかもすごく必要かなと思ってまして。

川畑:新しいものがどんどん増えていて、それもお店にとって新しいものというか、ちゃんと世界にとって新しいものが増えているような気がするんですよね。

横井:そうですね、昔の古い世界じゃなくて、今のNowな感じですね。僕自身も海外とか結構行くんで。アジアでもヨーロッパでも、海外って今はほんとに目まぐるしく変わってるじゃないですか。そういうのも感じてほしいなと思ってるんですよね。海外の雑誌とかも、古いものじゃなくて、新しい本をなるべく置くようにしてるんです。

津田:現地で買い付けされてるんですもんね。

―選ぶときには、「これ、誰かに見てもらいたいなあ」みたいな感じですか?

横井:僕の主観はほとんどなくて、これを見たらうちのお客さん喜ぶだろうな、っていうのがまず基準なんですよね。いつも本を買うときはうちのお店のお客さんが見てるのを想像しながら、どういうのがいいかなって一冊ずつ自分で選んで買ってます。なので、スーツケース空にして行って、帰りは50キロとか60キロとか。

―すごいですね。いつごろから続けられてるんですか?

横井:ここ(WORLD BOOK CAFE)はですね、前は違う方が経営していて、会社ごと買ったんですよね。それまで僕は公務員をしてまして、役所にいたんですよ。それで面白くなくて(笑) 世界が好きだったので、そっちに関わることをやりたいなと思っていて。カフェをやる前、20代の頃から本とかは好きだったんで、自分で買ったりはしてたんですけど。

「なければ、つくればいい。」

―あの…あとで音楽シーンについてもお話ししていきたいんですけど、今日はカフェシーンについても聞きたいです。今、カフェ文化って根付いてると思うんですけど、そういう中で、〈WORLD BOOK CAFE〉っていう場所は、どういう風に際立っていこうとしてますか?

横井:そうですね、地産地消とか、北海道リスペクトみたいなものって、結構あると思うんですけど、僕はちょっと違ってて。『札幌の人に世界のことを知ってもらいたい、ここから世界に旅立っていくような、そういう気持ちにさせる場所を作りたい』ってのがあって。僕自身そういう場所が欲しかったんですよね。だったら、自分でつくろうみたいな(笑) やってて楽しいことをやろう、そっちの方がテンション上がるし、と思っていて。で今は、自分の好きなことをやってますね。

―『なければ作ればいい』っていうのは、OTO TO TABIのスタートとまったく一緒ですよね?

川畑:まっっったく同じです。

―それこそ、そういうのは津田さんのきっかけも同じですよね。『なんでこんないいアーティスト呼ばないんだ』みたいな。

津田:そこはたぶんまったく同じ発想だと思います。OTO TO TABIさんには共感しかないです。

横井:OTO TO TABIには僕も行った事ありますけど、すごい良い雰囲気ですよね。なんか、手作り感というか。

津田:音楽業界の人が1人もいなくて、音楽が大好きな人たちが有志で集まって企画・運営しているっていうのが魅力的ですよね。

横井:ライブやってて、子どもたちが遊んでたりとか、ゆっくりできるスペースがあったりとか、お酒の試飲のところがあったりとか、すごい面白いですよね。ロビーではDJたちが好きな曲をかけたりだとか、すごい面白いなあと思ってて。

―それで、次が開催10回目になるわけですけども、そういうなかで、OTO TO TABIの特色、ってどんなものだと思いますか? OTO TO TABIが持っているシーンを、もし言葉にするとすれば。

川畑:けっこう毎年変わってきてて、テーマも意識もどんどん変わって、やる理由もどんどん変わっていってるんですよね。10年前はやっぱりライジングサンとかに行って『自分たちもこういうのやりたい』とかでした。あとは札幌の諸先輩方がイベントをやっていて、それに行って、すごい楽しいから『やってみたい』とか。でも、自分たちが聴いているようなアーティストを呼んでいるイベントってあまり無くて、じゃあ自分たちの好きなアーティストを呼んでやってみよう! っていうのがスタートでした。それもライブハウスじゃない場所で。

津田:たぶん、同じなんだ(笑) もちろんライブハウスも最高なんですよね、なんですけど。

川畑:最高なんですけど、それはそこでちゃんとやってくれる人たちがいるので。

津田:みんながやってるから。そう、それはお任せしてね。

川畑:別の楽しみを作る方が面白いっていう。最初の3回を札幌駅にあるプラニスホールでやってからは、『フェスって言える規模にしたい』という理由で大きな会場を借りました。その規模にしてやったら、呼べるアーティストも広がりました。最終的に芸術の森アートホールに落ち着いて、今に至ります。

津田:来年も芸森で?

川畑:来年も芸森です!

「今、音楽を聴いている人は、
ジャンルではなくシーンで聴いている」

―これまで会場が変わっていくなかで、OTO TO TABIは音楽以外にカルチャーの面も取り入れようとしてきたと思うんですけど、これまでの試みの中で覚えていることってありますか?

津田:僕はやっぱりあれが印象的でしたね、サウナとか、薪割り体験とか、ああいう北海道の冬、みたいな。札幌に住んでいる僕にとっても新鮮な体験でした。

川畑:自分たちでやれることは限られてるな、って思ったんですよね。いろんな人と一緒に何かをしないと広がっていかない。内容的にも認知度も広がっていかないなって思ったので、いろんな人と一緒にやるようにし始めたんです。

津田:チカホでやってたキックオフイベントみたいなの、ありましたよね? 『みんなで装飾作ろう』って。あれがすごく僕の中ではときめいたポイントで。話に聞くと、小さいお子さん達も参加してて、『みんなでOTO TO TABIの入り口の装飾を作りましょう』みたいになってて、で実際それを当日搬入していって、形にする、っていうのがあって。金儲けのためにやるぞ、とかじゃなくて、音楽を愛している人たちがやってるっていう、そのフィーリングが街に伝播してるというか、その感じを、チカホでやってるイベントを見て思ったんですよね。

横井:オープンな感じがしますよね。

津田:そう、パッケージングも『こういうことやってるおれたちって、かっこいいでしょ?』じゃなくて、『一緒に楽しもうよ』って雰囲気になってるのが、素敵だなっていう。

川畑:呼ぶアーティストも、最近はスタッフ10人くらいで投票して選んでいるんですが、きっとそれが2〜3人だけで選んでたらどんどんコアになっていくと思うんですよね。

津田:ですよね。

川畑:スタッフが増えて、それによってアーティスト自体も広がった感じがしています。関わる人が増えると、関わる人にも楽しんで欲しいって思うことが多くなってきましたし、あとは自分の友達に子供がどんどんできたっていうのもあって、いちばん来て欲しい友達がいるんですけど、1回だけ来れなかったんですよ。子供が生まれたばっかりで、行きたいけど大きい音がなってる会場で子供に対してどうしていいかわからないという理由で。それで、同じような悩みを持つ人も多いかなと思い、子供向けのイヤーマフやベビールームを用意したり、芸森の授乳室があることなどもちゃんとアナウンスして来やすいようにしました。気の合う友達には一番来て欲しいし、そもそもOTO TO TABIに来ている人はみんな友達になれますよね。

津田:そうなんですよ! なんか、世界観みたいなのを共有してるんですよね。あくまでも僕が感じている事なんですけど、今の音楽が好きな人って、シーンで聴いてるなと思って。ジャンルとかじゃなくて、もっと大きいシーンとして音楽を聴いてると感じています。だからロックでも聞くし、ヒップホップもきくしR&Bも聞くし、ハウスも聞くし、みたいな。でも、ただなんでも聴いちゃうってだけじゃなくて、じつはよく紐解いていくと、あるシーンの囲みの中にいるアーティスト達の作品を聴いているような気がするんですよね。Spotifyなどの「プレイリスト」やYoutubeの「関連動画」や、アーティストによるSNSからの影響が大きいのかと思いますが。

―それこそ津田さんは、ラジオ番組〈FELL ON THE STREET〉で、Spotifyのような音楽サービスをコーナーに取り入れたりしていましたよね。これからの音楽の聴かれ方を考えた時に、こういうリアルの音楽を聴く場所ってどういう風に求められていくと思いますか?

津田:今の時代だからこそ、色々な自由な音楽の聴き方があっていいんじゃないかなって思います。音楽を奏でる現場っていうのは、もはやライブハウスやフェスに限らないっていうのはもちろんあって。でも一番良いのはライブハウスなんですよ、当然。そのアーティストの表現の幅が一番広いのはライブハウス。いくらでも音出せるし、いろんな機材もあるし、経済的な面でもライブハウスがいちばんやりやすい、と。
なので、ラジオの選曲とかと同じだと思うんですけど、どんな音楽を伝えたいかによって、場所や時間を決めると楽しいのかなって思って。生演奏もそのアーティストの世界観にあった空間でやると、当然、そのアーティストの世界観が引き立てられる。僕が、〈WORLD BOOK CAFE〉さんでやりたいって言ったのも、僕が伝えたい音楽体験っていうのが『カルチャーに囲まれた空間で、カルチャーの香りがするアーティストの音楽をみんなで聴きたいな』っていうのがあって、で、横井さんに激しく同意していただいて(笑)

横井:僕もそうですね。音楽だけじゃなくてアーティストの周りの空気感というか、そういうのも大事かなっていうのはありますね。

「『Juxtapozed』という
言葉に込められたもの」

津田:音楽ってその…映像が見えるじゃないですか、イヤフォンで聴いてても…。

―そうですね、自分の歩いていた風景だったりとか。

津田:ヘッドフォンで聴いて…この曲の感じで夜のススキノを歩いてるオレ、かっこいい、みたいなのあるじゃないですか(笑)。そういうの、音楽が好きな人ってあると思うんですよ絶対。そこを皆さんに提供したいなっていうのはひとつで。
イベントのタイトルになっている〈Juxtapozed with U〉の、『Juxtapozed』は『並列』って意味なんですよね。で、『With U』。なので『君と並列に』『あなたと並列に』っていうことで。つまり、『一緒に並んで、一緒にいい夢みようね』っていうのもある。
いまアートカルチャーの世界で、「ジャクスタポーズド」っていう言葉が注目されてて、なにかっていうと、いろんな価値観とか表現方法をみんなで認め合おうよ、っていう。それと同じで、「ジャクスタポーズド・ウィズユー」で、『並ぼう』から転じて、『認め合おう』ってことなんです。まだ札幌ではあんまり知られていないアーティストかもしれないけど、「でもすごくいいよ」「楽しいよ」とか、すごく良い音楽だよっていうのを、一緒に、価値観共有して、素敵な音楽体験をしたいよねっていうことで名前つけて。
ちなみに、「Juxtapozed with U」っていう言葉自体は、Super Furry Animalsっていう、UKはウェールズのバンドの2001年の最高な曲のタイトルから拝借させていただいています。

―今回音楽イベントをやってみて、予想通りだったこと、あるいは予想以上だったことなどはありますか?

横井:そうですね、うちに来るお客さんって、カフェ以外のものも楽しみたいという方が多いので。その方々に共感していただけていた、と思います。 すごい嬉しかったのはあれですね、『あの場所でshowmoreを聞けたのがうれしかった』って、そういう感想が聞けた時にやってよかったなってすごく思いましたね。

津田:『あの感じはなかなかないよね』みたいな感想、けっこうありましたよね。ありがたい…。

横井:showmoreさんも実際カフェに来たときにすごく喜んでいただいて、すごく嬉しかったですね。

津田:印象的だったのは、井上くんに冗談で『でっかくなったらもう来てくれないよね、あはは!』みたいなことを言ったら、『でも、こういう場所でやるのは、売れて大きくなったらもう来ません、とは別の次元』って言ってましたね。『武道館とかでやるのとは別の次元の、やりたいライブだ』みたいな。

横井:アーティストから演奏していて心地よい空間だと言っていただけると、すごく嬉しいですね。

―僕も、showmoreのライブを見ていて、とてもリラックスして演奏してるなってのは感じました。それこそ、物理的な近さもさることながら、なんかこう、精神的な近さもあって。ライブの途中からchikyunokikiの奥山さんがサポートドラムに入った時に、ただサポートドラムに入るんじゃなくて、それまでの井上さんとの友情とか関係性まで見えるような…そういう近さでしたよね。

横井:近かったですよね。

津田:それをやりたかったんです。さっき言ったみたいに日常生活の延長でやりたかったので。ライブハウスと違って、人数が少なければお客さんとのコミュニケーションも取りやすいし、それもしたかったんですよね。近い距離感で、ゆったり…。ただ今回ちょっと反省点が…みんなお尻、痛かったんだと思って(笑)

横井:あー、そうなんですよね。

津田:次回からクッション置かないとね、みたいな。

―クッション、いいと思います。リラックスできそうで。20時からというスタートの時間帯は、会社帰りの時間帯を狙ったんですか?

津田:それもあるんですけど、でも遅い時間にはしたくて。仕事帰りに、1日の締めとしてバーやカフェで一杯引っ掛けて帰るみたいな感覚で遅い時間にして…対バンじゃなくワンアーティストでゆったりきいてもらいたい。対バンにすると45分とかのライブが多くて、「すぐ終わっちゃった」みたいなのあるじゃないですか、「もっと聴きたかった」みたいな。

川畑:あります!!

津田:そんな、僕がいつも思っているもどかしさからワンマンでお願いしてて。showmoreも最初60分くらいでやる予定だったんですけど、結局、1時間半くらいやってくれてましたもんね?

横井:(笑)

津田:次回、大比良さんも、4人セットで来てくれます。大比良さんがエレキで、showmoreの井上くんがキーボードで、ドラムがLUCKY TAPESのライブメンバーの松下ぱなおさん。で、チェロが、松任谷由実さんのサポートメンバーもやっている方なんですよ。伊藤修平さんっていう大比良さんのプロデューサーの方で、ずっと二人三脚でやられているんですけど。
ここの場所でチェロってすごいいいと思うんですよ。そういう、札幌ではあまりできないような音楽体験をみんなで楽しんでもらいたいなあ。それをきっかけにして、そのアーティストを知ってもらいたいのが1番ですね。
やっぱり、アーティストの素晴らしい作品の数々がもっと広まってほしい。そして、フォロワー数だの再生数だの上っ面の数字だけではない部分、本質的な部分で音楽カルチャーがもっと盛んになって欲しいなって。じゃあどうやって広めたら良いかなって時に、そのアーティストがより映える空間で、しかも距離が近くなればいいなと。(showmoreの時も)すごい近かったですよね?

横井:ゼロ距離感(笑)

津田:それってなかなか札幌には無いなって思ってて、ステージレスな感じというか、より一緒になれる、仲間になれる。…そう、やっぱり音楽好き同士、音楽仲間になって欲しいんです僕。あの、イベントのロゴとか読みづらくてしょうがないじゃないですか?

―笑 まあ、そうですね。

津田:なんて書いてあるかわからないし、意味もわかんないじゃないですか。何? どゆこと? ってなるじゃないですか。あれは、けっこうわざとで、秘密結社感を出したかったんです。秘密結社というか、音楽好きの隠れ家みたいな。暗号じゃないですけど、なんかよくわかんないけどなんだこれ? って思ったら、こんな近い距離で演奏してます、みたいな。しかもこういう空間で。『え、なんだこれ?音楽好きな人達がたくさん集まってる』っていうのはすごい、やりたいなと。

「第0回から、第1回へ」

―そういう評判が水面下で広がっていったら面白いですよね。さて、そんな〈Juxtapozed with U〉ですが、showmoreを迎えたこの前が第0回で、次回、第1回の開催が決まっています。日付は9月20日金曜日、アーティストは大比良瑞希さん。…期待値がすごい高いと思うんですよね。僕もすごい観たいですし。どんな回になると思いますか?

津田:さっきも言った通り、4人で来てくれるので、普通のアコースティックイベントよりも豪華で、絶対に聞き応えたっぷりです。
大比良瑞希さんってシティ・ポップって言われる事が多いのかもしれませんが、たぶんご本人もシティポップだと思ってはいないでしょうし、シティ・ポップだけでは全然語れない、色々な音楽やアートカルチャーを身に纏っている人で、今の東京のインディーシーンにおいて、要注目アーティストの代表的な人だと思うんです。
といいつつも、東京のシーンで主流となっているブラックミュージックの要素を含んだポップミュージックというよりは、そういうサウンドもありますが、もっともっとメロディとかエモーションとか、音楽の普遍的な良さが詰まった作品を多く作る方で、さらに一方で、海外の音楽カルチャーを大きくリスペクトしている方で、細かい音作りがいちいち洗練されていてセンスが良い。だから本当に、老若男女すごい楽しめるライブになると思います。
そして、彼女自身、音楽、本、映画、ファッション、全部に対して深掘りしまくってる人なんですよね。すごいアンテナの高い方なので、彼女の佇まいで刺激をもらえるようなところもあるのかな、とか。それこそ〈WORLD BOOK CAFE〉さんでやる意味ってそこにあるのかなって思ってて。

―第1回を開催するにあたって、まず名前が思い浮かんだのが大比良瑞希さんだったわけですもんね。

津田:もっと言っちゃうと、大比良瑞希さんを北海道の人に知ってもらいたくて、このイベントをやったようなものなんですけどね、実は(笑)

横井:でも、東京でそういう風に活動してる人を札幌で感じて欲しいですよね。そしたらあたらしい何かが生まれるかもしれない。

津田:そうそうそう。だからね、アーティストの人にもすごい見て欲しいなって思ってます。大比良さんって実はすごくアーティストからも愛されていて、七尾旅人さんも大絶賛していて、このまえ7月にやったワンマンで七尾旅人さんがゲストで登場したり。あと、蔦谷好位置さんも彼女の歌声は素晴らしいって言ってて。あとは、LUCKY TAPESやtofubeatsの作品でのコーラスワークはもちろんのこと、showmoreの「Circus」のPVに出演してたりだとか。あと、スターバックスコーヒーのイメージCMにも出演していたりもします。

横井:音楽だけじゃなく、アーティストも感じて欲しいってことですね。

津田:twitterのタイムラインに流れてきた『からまる』のワンマンライブでの生演奏も よかったですよね、みました? すごくいいですよ!

「これから盛り上がっていくために必要なことは」

横井:〈Juxtapozed with U〉も、もっと知名度を上げて、アーティストさんに『やってよかった』って言ってもらえるようになれば、さらにいろんなアーティストの方に来てもらえるのかなと。そっちの、アーティストに対するブランディングも大事なのかな、って思ってます。 僕もただ場所を貸すだけじゃなくて自分たちももっと頑張ってやんなきゃいけないな、ってのはありますよね。とにかく、お客さんに満足してもらえるように。津田さんひとり頑張るんじゃなくて、僕も頑張んなきゃいけないなと思って。二人でやってこうかなと思ってます。

津田:なんか本当に、みんなで盛り上げなきゃだめだなっていうのがあって。いろんなイベントで…例えば〈Juxtapozed with U〉だけじゃく、OTO TO TABIだけじゃなく、他のイベントだけじゃなくてみんなで盛り上げないと。全体が盛り上がらないと盛り上がらないので。たとえば札幌でなんでこんなにカフェが盛り上がってるのかっていったら、カフェがいっぱいできて、盛り上げてるからカフェブームとかになってるわけで。

横井:そうですよね、最近のカフェ…すいませんカフェの話になるんですが。

―聞きたいです。

横井:どこいっても同じような無機質な感じが主流になってきてて。やっぱ僕、カフェは店主が自分のやりたいことをカフェに反映してつくるっていうことに意味があるのかなって思ってて。

津田:世界観が大事ですもんね。

横井:ほんと、カフェもみんなで盛り上げることが必要なのかなって思います。

津田:ほんとにね、みんなで盛り上げなきゃだめなんですよ。1人で単発でやっても、もったいないじゃないですか。街として盛り上がればもっといろんな可能性が出てくるし、アーティストも『札幌ってすごいアツいところだから、そこへいったら必ず自分たちの音楽をもっと伝えられるから行きたいよ』って思ったりとか。

―OTO TO TABIでいうと、札幌という街はどのくらい意識します? あるいは、意識するようになってきましたか?

川畑:街と関わるっていうのは憧れますね、他の全国のローカルでやってるフェスなんかは特に地域と一緒にやっていて、フェスをやることで、とても人が来るし、活性化する。フェスによってはその地域に住んでる人を全員入場無料にしているところもあって、おばあちゃんやその辺のおじさんが自分たちが呼んだアーティストの音楽で楽しむ姿を見られるとか。地域と一丸となってやるっていうことにすごく憧れるんですけど、やっぱり札幌は都市なのかなっていうのがあって、街を意識すると言うよりは、ここに住んでいる自分たちがとりあえず面白いことをやるというのが、いちばんしっくりきてるのかなっていうのはあります。

津田:それの集合体でね、みんながやっていって、結果、札幌って『音楽の街だよね』っていうような雰囲気になって、音楽カルチャーが調子良くなって、いろんなアーティストも率先して来てくれるようになって、もっと音楽に触れる機会が北海道、札幌で増えたいなっていう。完全に音楽ファンとしての視点ですけどね。

―いいですね、そんな札幌になってほしいです。音楽ファンとして。

津田:土壌を作ればみんな来てくれるかな、みたいな(笑) やっぱりね、みんながぶつかる問題なんですけど、渡航費なんですよ。どうしても。

川畑:はい(笑)

津田:僕、ほんと思うのが、そろそろ、渡航費のサブスクリプションを誰かが始めてくれないかなと思っていて。(笑)

―というと、どういう仕組みですか?

津田:レコード会社ごとに航空会社と契約するとか。ラジオ局、テレビ局で契約するとか…にしちゃって、例えばエアドゥさんと提携して、そのほかイベンターさんとも提携して、月額でいくらでも乗って良いですよ、みたいな。

―いいですね。音楽を呼ぶと人も動くから、メリットは航空会社にもありそうです。

津田:何回来るかにもよりますけどね(笑)

―確かに(笑)

津田:でも今は、住宅のサブスクリプションとかもあるじゃないですか。クリエイターがよく使っている。

川畑:ありますね、定額でどこに住んでもいいっていう。

津田:このサブスクリプション化の勢いで、渡航費のサブスクリプション化を、訴えたい!

―訴えていきましょう(笑) では…そろそろまとめにはいりたいと思うのですが…。

津田:さっき言ったように札幌の街でいろいろ盛り上がって、で、みんなで最後に、年度の終わりに、OTO TO TABIで楽しもう!

―ありがとうございます!

Juxtapozed with U
vol.1 feat.大比良瑞希
日程2019年9月20日(金曜日)
場所WORLD BOOK CAFE
(北海道札幌市中央区南1条西1丁目 大沢ビル5F)
時間20:00オープン/20:30スタート
チケット前売り 2500円 +1ドリンク
当日券 3000円 +1ドリンク
予約前売りチケットは店頭販売のみ。
お電話にて当日券のご予約が可能です。
TEL)011-206-7376(17時〜22時)
※定員になり次第、販売終了となります。
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