音楽を発信することについての学び。
【後編】
繋がりがあるから、届く。

場所:苫小牧ELLCUBE

自分たちがつくっているものや考えていることを、届けたい人にちゃんと届けるにはどうしたらいいのだろう?この疑問に、果たして答えはあるのでしょうか。「発信」をテーマに掲げたOTO TO TABIによるインタビュー企画の第二回。【後編】は札幌から苫小牧へと場所を移し、〈江別 蔦屋書店〉でイベントづくりをされている望月起一さんと、苫小牧を中心にバンド活動とライブハウスのスタッフをされている澤谷恒一郎さん、そして前編に引き続きWebサイト〈CHOKE〉の平野貴大さんにお集まりいただきました。『人に届けるって難しい。だけどやっぱり挑戦したい。』前編と同じく、またしても濃い〈学び〉の時間になりました。

街にいく理由って、人だと思っていて。

左:江別 蔦屋書店 望月起一さん
中央:YOU SAID SOMETHING 澤谷恒一郎さん
右:CHOKE 平野貴大さん

「札幌から苫小牧へ」

―本日はOTO TO TABIのインタビュー企画にご参加いただき、ありがとうございます。この企画はOTO TO TABIスタッフがいま気になっている人たちと会って・話し・そして学びを得ていこうという企画になっています。
今回は「発信」をテーマにした回の【後編】となっておりまして、【前編】はこのまえ、札幌のライブハウスSound Lab moleでおこなってきたところです。この後編は「札幌市、以外」に目を向けた内容にしたいと考えまして、それに相応しい皆さんにインタビューをお願いいたしました。
では、ご紹介いたします。お1人目は、苫小牧を拠点に活動するバンド〈YOU SAID SOMETHING(ユーセッドサムシング)〉ボーカルギターにして、ライブハウス〈苫小牧ELLCUBE(エルキューブ)〉のブッキングマネージャー澤谷恒一郎さんです。ブッキングマネージャーというと、どういう仕事をされているんですか?

YOU SAID SOMETHING/澤谷恒一郎さん(以下、澤谷):ライブハウス内のイベント制作をする仕事です。出演者へのオファーをしたり、ツアーミュージシャンの出演希望を受けて、その日のライブイベントをどのような内容にしてゆくかを自分が中心になって組み立てていく仕事です。

―今回は、アーティストとしてのお話と、ブッキングマネージャーとしてのお話、両方をうかがっっていければなと思っています。よろしくお願い致します。

―そしてお次は、2018年の11月にオープンした〈江別 蔦屋書店〉にて企画営業チームリーダーをされていて、シンガーソングライターとしても活動されている望月起一(もちづき きいち)さんにお越しいただきました。よろしくお願い致します。書店ではどんな仕事をされているんですか?

江別 蔦屋書店・望月起一さん(以下、望月):ざっくりした言葉でいうと「イベント」です。月に100回くらいイベントやってるんですよ。それはいわゆる有名な人がトークしたりライブしたりとかではなくて、どちらかというと江別の方々が蔦屋書店を使って情報を発信したり、趣味の共有をするイベントがほとんどです。お料理教室とか、毛糸でマフラー作ろうみたいなワークショップとか、そういうのも含めて月100回。1日の中でなにかしらのイベントをやっています。

―なるほど。すごく大変だと思うんですけども、今日はそんな話もお聞きできればと思います。

―そして、最後にご紹介するのが、北海道の音楽情報を発信しているウェブサイト〈CHOKE(チョーク)〉を運営されている平野貴大さんです。前回から引き続きよろしくお願い致します。

CHOKE 平野貴大さん(以下、平野):よろしくお願いします。

―平野さんには前編の振り返りというか、感想をここでお願いできればと思います。

平野:はい、前編のメンバーは個々では関わりはあったんですけども、3人が一堂に介して札幌の音楽シーンについて話したことはなかったので、緊張もありつつ、お互いこんな課題があるんだなあと思いました。

―あらためて情報交換ができて楽しかったですよね。

平野:そうですね。

「それぞれの、街との関わり、人との関わり」

―前編では、くぼしょーさんが企画・開催されたDOSANCO JAMをトークの中心に据えたんですが、今回は澤谷さんと望月さんとお話をするにあたって、真ん中に置きたいイベントが2つあります。それは先日、江別 蔦屋書店さんで開催されていた音楽イベント〈江別おんがくの時間〉と、苫小牧ELLCUBEで開催されていた、YOU SAID SOMETHINGとTIMELY ERROR(タイムリーエラー)のWレコ発イベント、なんです。この2つのイベントが良すぎて、当初この後編で聞いていこうと思っていた内容がガラリと変わってしまったほどなんですよ。でもここで、僕から感想を言ってしまうと長々と語ってしまいそうなので、まずはお2人からそれぞれ、どういう趣旨のイベントだったかをご説明願えればと思います。

―望月さんからお聞きしたいんですが、あれはどういった趣旨で企画されたイベントだったんですか?

望月:僕、東京の西東京市というところの出身なのですが、三鷹や吉祥寺が近くて、遊びに行くことが多くて。三鷹に〈三鷹おんがくのじかん〉というイベントスペースがあったんですよ。その〈三鷹おんがくのじかん〉で知ることができた音楽が多くて…すごい感謝があって。でもそういう場所って北海道だと札幌を除くとあまりないか、あまり情報が出てきてない。だから、札幌ではなく、江別から発信。というか、江別にもそういう場所があったらいいなと思って、作ったんです。

―もう、それがすごく良いイベントだったんです。江別 蔦屋書店さんって、裏に森というか、「緑道(りょくどう)」と呼ばれる緑のスペースを持ってるんですけども、そこの真ん中に音楽のステージがあったわけです。そこでランチブレイクさんやTOCOTOCOさんがライブをしていたんですけども、とても周囲との調和があったんです。

望月:有り難うございます。

江別おんがくの時間

―あの日は、〈江別おんがくの時間〉を含めた、緑道を使った大きな催しをされていましたよね。

望月:そうです。江別 蔦屋書店って、ステージがあったところまでは蔦屋書店の敷地なんですけども、そこから奥は、江別市が持っている公園なんですよ。公園の指定管理者が主宰となってイベントをやるみたいな事例って、いま渋谷とか大阪の天王寺とかだったら流行ってきてるんですけど、北海道ではまだなくて。その1個目の事例をつくろう、というのがまず最初にあったんです。

―めちゃくちゃ野心的ですね! あの、江別 蔦屋書店さんに入ると、まずヨーロッパの図書館のような本棚が見上げるぐらいの高さにそびえているじゃないですか。まるで絵本のなかに迷い込んだみたいな気分になったんです。そして、そこを通ってさらに緑道に出ると、今度は森の世界が現れて、しかもそこでお祭りが開かれている———そんな体験だったのでとても感動しました。

―そして、ここで澤谷さんにも話をうかがいたいんですけども、YOU SAID SOMETHINGはこのまえ新しい音源『Y』を出されて、そのレコ発をバンドの本拠地である苫小牧でやったわけじゃないですか。

澤谷:はい。

―それで、僕は初めて、あそこまで苫小牧純度の高いイベントに行ったんですよ。それまでにも、関東が本拠地のバンドが北海道に来たときなどにELLCUBEには行っていたんですが、この前ほど苫小牧純度の高いイベントは初だったんです。それですごく街のエネルギー・熱量を感じて感動してしまったんです。

澤谷:有り難うございます。(笑)

―それで思ったんですが、ELLCUBEと苫小牧の関係性ってどんな感じなんですか?

澤谷:このあいだは地元にいるTIMELY ERRORというハード・コアのバンド…もう13年くらいやってるんですけども、そのバンドのファースト・アルバムがリリースになるタイミングとYOU SAID SOMETHINGの新しい音源のリリースのタイミングが近かったので、じゃあ一緒にやろうよ! という事でWレコ発という形のイベントを組みました。苫小牧だけじゃなく札幌や函館とか、いろんな場所からバンドに来てもらって、2ステージのサーキット形式で進行する、全部で10バンドくらいが出演したイベントだったんです。 地元に根付いて活動しているバンドにスポットを当てつつ、自分たちのお客さんにもいろいろなバンドを見てもらい、苫小牧じゃないとできないイベントを発信していきたいと思っています。ここじゃないとできないことをやる、っていうのが役割だと思いますし、そういう関わりかたをしていきたいなと。

―まさにその気迫を受け取った日でした。それで、すごい心が動いたんですよ。当初このインタビューで聞こうと思っていたのは、「どうやって“市の外”から人を呼ぼうとしてますか?」みたいなことだったんです。でも、そうじゃないと思って。逆に、地元の人…つまり両方とも地元の人に愛されている熱量があって、それが盛り上がりになっている、っていうのを感じたんですよね。なのでまず今日それぞれにお聞きしたいのは「地元に対してどういうアプローチをしていますか」ということなんです。

―たとえば江別 蔦屋書店さんだったらどういうふうに江別の人たちと関わっているんでしょうか?

望月:それはすごい重要で、「蔦屋書店」っていうと東京の大きい企業で…みたいな感じがあると思うんですけれども、それが急に現れて大きい土地にドーン! って建ったら住んでる方たちは引いてしまうと思うんですよね。それはすごく避けたくて。街の人に迎えられながらOPENしたい、という思いがあったので、OPENする1年前から江別に住んだんですよ。

―そうなんですか!

望月:お店がOPENする前に、上司に「江別で友達100人作ってこい」って言われたんです。(笑) で毎日居酒屋とかひたすら行って、仲良くなったり、そこでどんどん数珠つなぎで繋がっていって、江別で知り合いをたくさん作ったんです。出会う人に「蔦屋書店っていうお店をやらせていただきます。こんなお店で、こんな考え方で、こんなことをやろうと思ってます。なにか一緒にできることがあったらやりませんか?」って話をひたすらしていったんです。だからオープンして3ヶ月で、月100回イベントができるようになりました。

澤谷:じゃあ、1日複数回あったりするってことですか?

望月:そうです。どうして100回かっていうと、月30日あるじゃないですか、で、朝昼晩ってイベントをやっていったら月100回ぐらいになるよね———ということで、100回を目指したんです。だいたい1日に3組くらいはイベントをしています。キッチンで料理教室してて、個室でワークショップしてて、トークショーがあって、みたいな。

澤谷:すごいすね。(笑)

望月:面白いですよ。歩いてみたら誰かが笑いながらコミュニケーションしてたり、何か作りながら、例えば旦那さんの愚痴を言っていたりとか、そういうコミュニティが育つ場所になってきてるんですよね。「あそこの直売所の野菜安かったよ」みたいな話があったり、共通の趣味で集まっている人たちだから、仲良くなってそのあとお茶したり。出会いの場所になって、思い出がどんどん積み重なってく場所になってきてる。
あと大事なのが、「今日は何がやってる」じゃなくて、「行ったら何かがやってる」って状態にするのが大事だと思っています。「このイベントやってるから行こう」じゃなくて、「あした蔦屋書店行こう、なんのイベントやってるかな?」っていう、そのイメージ付けを大事にしています。

―地元を大事にするっていうことが、自分たちを盛り上げることとすごいイコールになってるんですね。

「サード・プレイスとは」

―澤谷さんはELLCUBEで今のお仕事をされるようになってどれくらいですか?

澤谷:4年くらいですね。それまで札幌で販売の仕事してて、出身は苫小牧なんですけども、いろんな縁があって今の店長に誘ってもらって。

―バンドにとっては苫小牧がホームになると思うんですけども。

澤谷:そうですね。(笑)地元なんで。

―バンドにとってホームがあるってどういう感じですか? たとえば、苫小牧にずっといたい、あるいはもっと出ていきたい、とか。

澤谷:自分は苫小牧にいたいなと思いますね。有り難いことに録音できる環境だとか、ライブができる場所・練習スタジオなど、バンド活動に必要なものは揃っています。地元の仲間もいます。それこそSNSでの発信もできるので、ここでしかできないことが、今は少しずつできてるかなと。
あとは、自分が音楽を始めたのは海外の音楽に憧れてスタートしたんですけど、ここ何年かはそういう海外のアーティストのツアーの案件も関われるようになったりしてて。

望月:すごいなマジで…。

―そういうところからも思うんですが、苫小牧の人たちってとても音楽に対してオープンだなって思うんです。

澤谷:そうですね、人にもよると思うのですが。(笑) ライブハウスに出入りしてるお客さんだったり、バンドマンだったり。地元のバンドもいろいろです。年配の方のコピーバンドや、苫小牧だけで活動してるバンドもけっこういます。僕は地元の人にも新しい文化に触れて欲しいなと思っていて、なのでそういうツアーバンドが来たときに必ず地元のバンドを対バンでつけたり、接点を作ってあげるっていうのが大事だなと思っています。

―前編でmoleの大嶋さんとも話したんですけども、ライブハウスって「怖い場所だ」と思われて敬遠されがち、みたいな話題が出たんですが、ELLCUBEはいかがですか。

澤谷:そうですね、「怖い場所だと思われたくないな」っていうのはすごくあります。有り難いことに高校生とか若い子たちの出入りがちょっとずつ多くなっているので。

―ELLCUBEって、軽音楽部がありますよね。

澤谷:あ、はいはいはい。

望月:マジすか。すごいですね。

―そう、すごいですよね!

澤谷:(笑)楽器をやってる子はいるんですけど、高校生バンドが一時期よりも少なくなってるように感じたんです。いろいろ話を聞くと、今高校に軽音楽部が全然ないと。だったらELLCUBEで練習する場所と機会を与えてあげたいなって。
僕も高校の時からバンドをはじめて、地元にそういう集まる場所があればいいなっていうのは思っていたので、それでELLCUBEに軽音楽部つくろうと思って、立ち上げたんですよ。2年ぐらい前に。

望月:それってすごい重要ですよね。コミュニティを育てるって側面もあるし、街にとってサード・プレイスってすごい重要なんですよ。学校でも職場でもない“第三の場所”、それがあるかないかで、その街においての楽しさ・充実がぜんぜん変わると思っています。ELLCUBEの軽音楽部はこの街の若手ミュージシャンにとってサード・プレイスになってますよね。

澤谷:なっていたら…とても嬉しいですね。(笑)

―そういう試みがもっと広まっていくにはどうしたらいいかなって考えた時に、例えば、CHOKEとかがそういう窓口になったりすればいいんじゃないかと思うんです。CHOKEってリリースとかの情報も募集していますよね。

平野:はい、どんなバンドでもリリースの情報があれば、事前にメールをくれれば記事にいたしますし、インタビューして、って言われたら、しますし。

―その土地の熱量とか、やってる試みとかも、連絡がいけば記事にできたりとか。

平野:そうですね。やっぱり、知らないと人は「無い」って思っちゃうんです。本当はそこにすごい面白いイベントがあるのに、それを発信する術がないから、誰も知らない。で、やってないってことになっちゃうってのはなんかもったいないなあと思います。たとえば…僕は銭湯でライブをしたいって思ってるんですけど。

望月:いいですねえ。

平野:東京だとそういう変わったイベントもあるんですけど、北海道ももしかしたらあるかもしれない…けど、知らないから「無いんだな」って勝手に思っちゃってるかもしれなくて。
例えばすごい離れた土地でも「こういうイベントやってるよ」っていうのをメールくれたら、気軽に見に行くってことはできないですけども、どういうイベントで、どういう熱意があるのか、という情報は発信できます。

―その街々のシーンがあって、たとえば苫小牧だったらこういうシーンだし、旭川だったらこういうシーンだし、っていういろんなことがCHOKEに集約されていったらいいなっていうのが僕の個人的な気持ちです。例えば〈江別おんがくの時間〉も、CHOKEを告知の手段にできたりだとか。

平野:あの…1回、メールいただいたことがあるんです。

―あ、そうなんですか!

望月:こういう接点がないときに、メールしたんですけど、返事かえってこなくて。「こないな」って思ってたんですけど、実は平野さんは返事くれてて。(笑)

―行き違いがあったんですね。じゃあこれは、解決ですね。(笑)

「知らないと無いことになってしまう」

―平野さんがおっしゃった「知らないと無いことになってしまう」っていうのは本当にその通りだと思いました。ライブハウスが軽音楽部やってるっていうのも、例えば、いろんなライブハウスが真似したってオッケーですよね?

澤谷:ああもう! ぜんぜんオッケーです、もちろん! 

―だって、ライブハウスの軽音楽部同士が対バンするようになったらアツくないですか?

澤谷:いやー、面白いと思います。

―たとえば、苫小牧のライブハウスの軽音楽部と札幌のライブハウスの軽音楽部が対バンする、みたいなことが起こるようになったら面白いと思うんです。ところが「ライブハウスに軽音楽部があってもいい」って事はそんなに知られてない…でもそういうのをCHOKEとかで発信していけたら、変わってくるかもしれないと思うんです。

平野:ELLCUBEはあれですよね、ハロウィンのときにイベントの売り上げを施設に寄付、みたいなことをされてましたよね?

澤谷:はい、毎回じゃないのですが、それはもう1人のスタッフが企画しています。イベントによって入場時にお菓子を集めて、それを地元の児童館に寄付するというイベントをやってて。

平野:なんかこう、地元に還元というか、愛がありますよね。別に札幌のライブハウスに愛が無いわけじゃないんですけど、ただ単にライブをやるっていう場所じゃなくて、ライブハウスとしての機能以外の良さがELLCUBEにはあると思います。

澤谷:ありがとうございます…!(深々) バンドやってる時も、たくさん来てくれてたよね。

平野:ほんとに毎週来てた月もあったりして、でも呼んでいただいて嬉しかったです。

「いま、どんな告知が求められているのか」

―このインタビュー企画の第一回でも話に出たんですが、OTO TO TABIは「まちづくり」とか「町おこし」に憧れはある、でも僕たちがやろうとしているのは、ただの音楽好きが集まって自分たちの好きな音楽を呼ぶことなので、ダイレクトに街づくりとかではないんです。でもなんかすごく、やっぱり憧れますね。単純に地域に愛される、受け入れられるっていうことがすごく大事なことだなと思いました。

望月:地方は難しいですよね。苫小牧は人口17万人、江別は12万人弱なんですけど、札幌は200万人なんですよ。で、蔦屋書店の第1号店がある渋谷区・代官山だと商圏人口1000万人くらいいるんですよね。だから毎日違うお客さんが来ても成り立ったりするのですが、でも地方はそうはいかない。毎日違うお客さんが来るんじゃなくて、同じお客さんが毎週来たい! と思うお店を目指していかないと、持続していけない。

―なるほど。

望月:「広く発信するぞ!」っていうよりかは、もっと地元のコミュニティを巻き込んで「深く強い告知」は心がけてるかもしれないですね。

―それはより具体的に言うとどういう形になるんでしょうか。

望月:例えばイベントをするときに、登場人物を蔦屋書店だけにせずに、町の仲間たちにも入ってもらう。そうすると、その人たちの友達や関係が強い人も来てくれる。そのために、なによりも蔦屋書店を自分の店だと思ってもらうというか、自分の家みたいな感じで使ってもらう。そういう仲間を増やしていくことですね。

―ここで、前編の時にも出た課題を再び考えてみたいんですけど、それは「今は情報が埋もれてしまう」っていうことなんです。昔のほうがピンポイントで求められているところに自分たちの情報を投げられたけど、今はそういうことが難しくなってる、っていう。

平野:前編のインタビューでご一緒したmoleの大嶋さんがバンドをやっていた頃は、来てくれた人にアンケートを書いてもらって、次のライブの情報をその人の住所に葉書を送るっていう方法だったみたいなんです。今の、SNSにフライヤーを載せる『広い告知』じゃなくて、ピンポイントだった。それに比べて今は1回ツイートしてもすぐ流れてっちゃうし、『告知の告知』も必要だ、みたいな。

―そういうSNS告知の難しさ、っていうのは、望月さんはどう感じていますか?

望月:商業施設的な目線で言うと、僕はすごく助かってます。便利になったな、って。特に、ハガキは時間もお金もかかると思うんです。それが無いと言うのも非常に嬉しい。
でも、確かに(SNSは)広く浅くの感覚はありますよね。『狭く深く』の訴求はSNSじゃ難しいかもしれない。

澤谷:自分は、ちょっと前より効果が薄くなっているような感じがしていて。たとえばバンドの告知をTwitterやインスタに載せる、そこで、ただ載せるだけでお客さんが来てくれるみたいなのが、いったん落ち着いちゃってる感じがして。

―SNSとかのツールに対する興奮度って今、世の中にあまり無くなっている気がします。あくまで僕の考えですけど、SNSに限らず、音楽のストリーミングサービスにしても、みんなそのツールを使うことへの興奮があまり高く無い気がして。ただ便利だから使っているというか…

澤谷:スピッツの楽曲が解禁になってめちゃめちゃアガりましたけどね。(笑) みんな好きだし。

―ああー! そういうのはありますねー!

望月:入り口がSNSになったから興奮しないというよりかは、コンテンツ(中身)なんでしょうね。もちろんモノも大事だし。難しいですね…。

平野:自分はDJもやっているんですが、DJとバンドを比べた時にすごくわかりやすいのが、DJのイベントはフライヤーを絶対ちゃんと作って、ちゃんと印刷して、街に配るんです。それが、「いまSNSあるから意味ないだろ」って思いがちなんですけど、着実に集客につながっていて…

一同:へえー!

平野:そのフライヤーも、ダサかったらお客さんは来ないし、カッコよかったらそのフライヤーを手に取って遊びに来てくれる。だから自分で作れる人は作るし、作れなかったらギャラを払って他の人に作ってもらう、っていう文化がちゃんとあって。

望月:たしかにDJはありますよね。

平野:で、それを置いておくショップっていうか、たとえば札幌だったらPROVOとかに無数のフライヤーが平積みで置いてあって、遊びに来たお客さんはそこをチラッと見て、イベントをチェックしたりとか。

―フライヤー置き場がひとつのショーケースというか、センスの良さを争う場なんですね。

平野:はい。SNSの告知が飽和してる時に、逆にアナログな選び方でイベントに行く良さっていうか…お金はかかっちゃうんですけど、イベントをやるにあたって、そういう(告知をする・しないの)差があるなって思います。だから、今後も、お金はちょっとかかっちゃうけど、自分たちで作れるひとは作ればいいし、できないひとは頼めばいい。印刷してたとえばELLCUBEに持ってきたりだとか、そういう地道なことが意外と…

―実際に顔を出して置いてもらうっていうのも、人と人のつながりができていいですよね。

平野:だからSNSの告知で困ってるって人は、それをやっちゃえば一抜けできるのかな、って。

―デザインとかフライヤーに力を入れていくと抜け出せると。

平野:CDとかのパッケージもそうですよね。YOU SAID SOMETHINGの新しいCDもパッケージが普通のCDじゃないじゃないですか(※)。多分イベントとかも絶対そうだと思っていて。
※編者注:ユーセッドの新音源『Y』のパッケージは真空パックみたいなフィルムのパッケージでめちゃめちゃカッコいい

望月:ネット時代だからこそ対面するコミュニケーションの価値が今見直されていて、対面のほうが深く繋がれるし、だからどっちもやったほうがいいんでしょうね。

平野:そうですね。どっちか、ではなくどっちもやっていく。

「YOU SAID SOMETHINGの目線」

―いまYOU SAID SOMETHINGは新しい音源も出して、絶賛キャンペーン中というか、いろいろ外に出ていってるタイミングだと思うんですけども、どういったところに力をいれて新しい音源を押し出してますか?

澤谷:今はそうですね…メンバーが変わって、2年ぶりの音源だったので、いままでお世話になったお店に置いてもらったりだとか、あとは、それ以降ツアーをやっていきたいとか。
数多くライブができるバンドではないので、道内もそうなんですけど、道外の協力してくれる人だったり、そういう人たちに手伝ってもらって広めてもらっている、って感じですね。

―YOU SAID SOMETHINGを応援している人っていろんなところにいますよね。レコード屋さんとか。

澤谷:道外に応援してくれる人がいるってのは有り難いですよね。大衆に受ける音楽だとは思ってないんで、やっぱりその、ジャンルに特化した個人店とか、ウェブショップみたいなところでプッシュしてもらったら売れ行きが良くなったりだとか、局地的に盛り上がる感じはあります。

―レコ発のツアーの最中だと思うんですけども、いまは1番どこを目指していますか?

澤谷:12月8日に札幌のライブハウス〈SOUND CRUE〉でツアーファイナルがあるので、そこを盛大に盛り上げられるように、まあ東京のツアーとかもあるんですけど、そこを目指して今は頑張ってる感じです。

―楽しみにしてます。それこそ、苫小牧のバンドはYOU SAID SOMETHINGにしろNOT WONKにしろ、いっそもう海外のサウスバイサウスウエスト(※)とかに出ても盛り上がるんじゃないかと思うくらいなんですが、でもいろんなところに行っても最後には苫小牧に帰ってきて欲しい存在というか、そんなことを勝手に思っています。
※サウスバイサウスウエスト:アメリカ・テキサスで開催されている世界的なショーケースイベント

澤谷:海外に行ってライブをするのは、目標の1つではありますね。

―いいですね、そういうYOU SAID SOMETHINGも見たいです。

「ふたつの街の、宝物みたいな場所」

―地元への関わりから、少し広い意味での発信の話になりましたが、いま江別 蔦屋書店さんが外に向けてる目っていうのはどういう感じなんでしょうか? 例えば北海道の違う都市、札幌とかに対しては。

望月:そういう意味では、あんまり見てないかもしれません。市外からたくさん人を呼ぶぞ! というよりかは、江別の方を第一に考るようにはしていて。最初のほうで澤谷さんがおっしゃった通り、そこでしかできないことを目指しています。

―そっか! “江別の書店”であることが大事なんですね。

望月:そうなんですよ! 僕たちバズりたいともあまり思ってないんです。

平野:どっちかっていうと地道に地域に…

望月:そう、お客さんとつながった帯をどんどん太くしていく作業だと思っています。

―確かに、江別 蔦屋書店という空間は知っている人だけの宝物であってほしい場所ですよね。僕はそれをELLCUBEに対しても思っていて、ここにはいろんな所からたくさん人が集まって来て欲しいですけど、同時に、苫小牧に住んでる人にとっての大事な場所でもあって欲しい。

澤谷:外の人と地元の人が関わる場所にしたいなと思いますね。そこでなにか接点が生まれたり、「行ったらあの人に会える」とか、そういう楽しさもあればいいと思うので。

望月:苫小牧にこういう場所があるのはほんとに羨ましいですね。苫小牧にYOU SAID SOMETHINGとNOT WONKがいて、ELLCUBEがあることが羨ましいです。街にいく理由って、人だと思っていて。

澤谷:理由が人、というのはすごく共感します!

望月:たとえば、旅行に行く場所を選ぶって時、その場所に友達がいるってなったら、すごく強いモチベーションになると思うんです。そういう意味では苫小牧を目指してくる人は多いと思う。

平野:OTO TO TABIもそうなんですけど、苫小牧の人たちって「ないからつくる」精神がすごいあるなって感じていて。FREE KICKだったりNOT WONKだったり、YOU SAID SOMETHINGだったり、わりと自分たちでできることをまかなってしまうっていう精神を見ていてすごいかっこいいなと思っていて、だからCHOKEをつくった、っていうのもあるんです。ないものをつくるっていう精神が、苫小牧の先輩バンドから学んだ精神なんで。

―ないものをつくる。なにか、またいろいろと面白いことが生まれていったらいいですね。では、そろそろインタビューを終えようと思います。本日はありがとうございました。

YOU SAID SOMETHING「Y」

1. My Favorite Thing is Not You Are
2. NOT SO FAR AMERICA
3. Liar & Bastard

AYCD-005 ¥1000
ライブ会場・webshop・一部レコード店・ディストロなどで発売中。

取り扱い店舗
THISTIME online store
=Domestic=ドメス
FLAKE RECORDS
HOLIDAY! RECORDS
FUN MOLE RECORDS
LIKE A FOOL RECORDS
LONG PARTY RECORDS
・Wonder Goo苫小牧店
SANOTEN MUSIC
YOU SAID SOMETHING online store
YOU SAID SOMETHING x bulbs of passion pre.
YOU SAID SOMETHING 「Y」リリースツアー
日程2019年11月17日(日曜日)
場所調布Cross
時間open 17:00 start 17:30
チケットadv¥2,000 door¥2,500(1drink代別途)
出演・YOU SAID SOMETHING
・bulbs of passion
・本棚のモヨコ
・either
・よしむらひらく
・しゃっく
DJ・影正一貴(ClubBAGSY)
YOU SAID SOMETHING
NEW EP [Y] Release Tour FINAL
日程2019年12月8日(日曜日)
場所札幌SOUND CRUE
時間open/start 18:30
チケットadv¥2000/day¥2500(+1drink¥500)
LIVE・YOU SAID SOMETHING
・deerafter
・Mazindol
・Madre Orange
DJ・タカイチ☆ヤング
FOOD・Mash Apple Kitchen
SHOP・HOLIDAY!RECORDS
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